GLEXITへの行進ーグローバリゼーショからの離脱
 
ウェーン・マドセン 2016年11月25日
 
世界は、投票箱を通してはっきり声を上げている。イギリスのBREXIT(EUからイギリスの離脱)にイェスの投票から、アメリカ大統領として反グローバリゼーションのドナルド・トランプが選出されるまで、世界は、世界を均質化して、文化的アイデンティティ、宗教、政治が重なる政府という不透明な超国家への反対をはっきり主張している。アメリカ大統領選挙は、グローバリゼーションの有害な発現の全て関する国民投票だった。つまり自由貿易、解放された国境、国家主権を曖昧にする国際機関に従属させることに関する国民投票だった。
 
あらゆる大陸で、EUや国際司法裁判所から、北太西洋条約機構(NATO)や国連に至るまで、国際機関からの離脱を支持する大衆的な声がある。
 
今年8月にフィリピンのロドリゴ・ドテルテ大統領はフィリピンを国連から引き上げると脅した。それはインドネシアのスカルノ大統領が1965年見事に国連から脱退して以来初めての国連加盟国による脅威であった。
 
経済的・政治的グローバリゼーションの擁護者は、アメリカのトランプ選出とイギリスのBREXITの成功でひどい打撃を受けただけでなく、南アフリカと他のアフリカ諸国がハーグの国際司法裁判所(ICC)からの脱退決定でもひどく打撃を受けた。世界的なヘッジ・ファンドの悪人ジョージ・ソロスに強く影響されている国際裁判所は、主にアフリカの指導者を戦争犯罪で起訴するので、ますます"国際白色人種裁判所"とアフリカ人に見なされている。今年10月に南アフリカはブルンジやガンビアと共にICCを離脱すると発表した。皮肉にも、しかも間の悪いことにICCの主任検察官ファト・ベンスダはガンビア出身なのだ。(地図1参照)
 
2015年南アフリカは、以前ICCによって起訴されたスーダン大統領オマール・アル=バシールを南アフリカ公式訪問中に逮捕しなかったため、ジョージソロスが資金援助するNGO(ヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナルを含む)のいつもの顔ぶれから非難された。南アフリカはICCの内政干渉を拒絶し、法廷へのこの反感が結果的に、法廷を離脱するという最近の決定となった。
 
その1ヶ月後、ロシアはICCを設立すこととなった2000年の「ローマ協定」の調印国を離脱すると発表した。11月にペルーのリマで開催されたのアジア太平洋経済サミット(APEC)で、フィリピン大統領ドテルテもフィリピンはICCを離脱するロシアやその他諸国に加わるだろうと発表した。ドテルテは「ICCは役に立たない。ロシアは離脱した。私も従うだろう。なぜなのか。それは我々のような小さな国家だけが打ちのめされているからだ」と述べた。他のアフリカ諸国もICCを破棄しようと考えている。それらにはウガンダ、ケニヤ、ナミビアも含まれている。2015年ナミビア大統領ハーゲ・ガインコブは元タンザニア大統領ジャカヤ・キクウェテを訪れてナミビアに続きICCを脱退するように強く促した。南アフリカのアフリカ同盟サミットで、ガインゴブはこう述べた。「我々がICCをつくったという者がいる。しかし何か役に立つものをつくり出したが、後にそれが忌まわしいものになったとき、当初意図されたものではなくなったのだから止める権利がある」と。
 
BREXITとトランプの勝利は多くの他の国の選挙民を励まし、国家主権を妨害する装置を拒否するようになった。2016年12月4日はグローバリストの狙いを拒否する分岐点となる日だ。それは2016年4月24日のオーストリア大統領選挙のやり直しの日だ。そこで反EUオーストリア自由党候補ノベルト・ホッファーは親EUの緑の党アレクサンダー・バン・デル・ベレンに僅差で敗北した。77,900の不在者投票が間違っていて、それは典型的なソロス介入選挙であることがわかった。オーストリア憲法裁判所が新たな選挙を命じたのだ。12月4日の選挙の結果は、オーストリアがヨーロッパ中で広がる反EU世論のうねりに巻き込まれているのでホッファーにかなり有利だと世論調査は見ている(訳注:投票結果は同じく親EU派が僅差で勝利)。12月4日はまたイタリア憲法改正国民投票の日でもある。
 
イタリア首相マテオ・レンツィは彼の政治生命を国民投票にかけ、もし成立したらイタリア国会上院の権限を縮小し、イタリア地方自治権を大幅に縮小するとしている。レンツィは彼の国民投票への支持を庶民を代表しないいつものエリートの社交界メンバー連中に求めた。つまり俳優、歌手、有名人シェフ、プロスポーツ選手、映画監督、その他社会の気をそらす寄生虫のようなやからの支援である。モンテネグロのNATO加盟運動は、ソロスとCIAによって資金援助された運動員によって支援され、モンテネグロ俳優、ジャーナリスト、プロスポーツ選手がテレビコマーシャルに出てNATO加盟を主張させた。多くの世論調査が大多数が軍事同盟参加に反対していることをしめしているにもかかわらずだ。(地図2参照)
 
EUとグローバル統合の支持者であるレンツィは、もし国民投票が失敗したら退陣すると述べた。そして世論調査では「ノー」の投票がかなり優勢であるので失敗することが予想されている。2016年6月24日(BREXIT)と2016年11月8日(トランプ選挙)がグローバリズムを選挙民が拒否した特筆すべき日であるように、12月4日は歴史に残る日といってもよい。レンツィはすぐに他の信用を落としたグローバリストと共に国際統合の歴史的失敗の脚注として加わるだろう。つまり元イギリス首相トニー・ブレア、デイビッドキャメロン、元ベルギー首相ヒー・フェルホフスタット、フランス大統領フランソワ・オランド、ドイツ首相アンゲラ・メルケルらと共に。
 
GLEXIT(訳注:グローバリズムからの離脱)のもう一つ重要な日は11月13日である。11月8日のトランプ選挙でなお揺れているグローバリストの世界で、親ロシアの元ミグパイロットのルーメン・ラデフは政治的に駆け出しではあるが、ブルガリヤ大統領選挙に勝利したという知らせが入ってきた。その選挙でブルガリア親EU政府は退陣することとなった。同じ日にモルドバの選挙民はイゴール・ドドンを選んだ。彼はモルドバ・EU貿易協定を拒否し、ロシアに擁護されたユーラシア経済同盟に加わることに賛成した。ソロスがメディアや政治組織に親EU、親NATOの家来を伴って大きく介入した諸国の2つの選挙は、世界がグローバリズムを拒否している歴史的なもう一つの兆候であった。(地図2参照)
 
EU、NATO、ICCに加えて、他の地域的なグローバリスト志向の組織も永続的な崩壊の危機にある。南アジア地域協力連合(SAARC)は親インド派と親パキスタン派で分裂した。最近のパキスタンでのSAARCサミットは、インドが出席を拒否して中止された。インド派にはまもなくその同盟者バングラディッシュ、ブータン、アフガニスタンが加わった。その組織は永久に分裂したようだ。その他モルディブ、スリランカ、ネパールのSAARCメンバーがインドに反対して、大部分がパキスタンと提携している。もう一つの失敗した国際組織はアラブ連盟であり、アラブ連盟はサウジや湾岸マネーの家来である。そしてシリアやリビアがNATOが支援するジハーディスト革命に直面したとき、彼らを資格停止にしてその無益さを示した。アラブ連盟はまたサウジアラビアの傀儡であるイェメン政府の加盟を認めた。(地図3参照)
 
アフリカ諸国がICCから離脱するのを反映して、ベネズエラは2013年、アメリカの影響を大きく受けた米州人権委員会(JACHR)からの脱退を発表した。JACHRはワシントンDCのホワイトハウスの隣に本拠を置く米州機構による考案品である。ベネズエラの脱退はまたコスタリカに本拠を置く米州人権裁判所(CrteIDH)の裁判権も拒否した。ドミニカ共和国は2014年に米州人権裁判所から脱退した。ドリニダード・トバゴは≪米州体制≫つまり西半球におけるアメリカ覇権拒否の先陣を見事に切っている。JACHRへの批判は、エクアドル、ニカラグア、コロンビア、ペルーからも出ている。(地図4参照)
 
大英帝国の時代錯誤の遺物である旧イギリス植民地は、王室追随国家グループとして、元イギリスの植民地を取り繕っているが、ガンビア、モルジブ、ジンバブエが暗に無価値となった国際組織を離れるのを見ることとなった。(地図1参照)
 
トランプが、アメリカは環太平洋連携協定(TPP)から離脱すると宣言したことはまた、グローバリゼーションの大義にとって大打撃であった。TPPはアメリカの離脱で死滅した。アメリカのTPP拒否は、ニュージーランドや韓国のような他のTPP調印国を、多国間主義よりも二国間主義を新たに好む中国との貿易協定拡大を検討させることになった。≪新世界秩序≫が存在するが、グローバリストが構想したものではない。≪新秩序≫は国家主権、文化的、宗教的独自性を復活させるものであり、選挙で選ばれない国際官僚による支配の拒否なのだ。
 
記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2016/11/25/march-glexit-globalization-exit.html
  地図1
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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<新見コメント>
この「GLEXITへの行進」の翻訳は、「マスコミに載らない海外記事」で読んでグローバリズムへの拒否がここまで広がっていることに驚きました。しかし翻訳記事ではアフリカアジア、中米などかなり地図で調べないと分からない国がありました。ですから自分で地図も入れて、もう一度読み直す意味を込めて翻訳し直してみました。
 
ここではイギリスのBREXIT(英国のEU離脱)やトランプの当選は言うまでもなく、その他にもGLEXIT(グローバリズムからの離脱)現象が多く起こっていることを説明してくれています。
 ・フィリピンのドテルテ大統領当選(南沙諸島問題で中国との対話を開始)、
 ・国際司法裁判所離脱(南アフリカ、ブルンジ、ガンビア;ブルンジ、ガンビアは検討  中)
 ・オーストリア大統領やり直し選挙(親EU派大統領僅差で当選)
 ・イタリアの国民投票(国民投票が否決され、レンツィが辞任)
 ・ブルガリア大統領選挙(親EU派を打ち破り親ロシア派が当選)
 ・モルドバ(EUとの貿易協定拒否、ロシア寄りの貿易協定を選択)
 ・南アジア地域協力連合(インド派とパキスタン派に分裂)
 ・米州人権委員会(JACHR)ベネズエラ離脱(エクアドル、ニカラグア、コロンビア、  ペルーは批判的) 
 ・米州人権裁判所ドミニカ脱退(ベネズエラ、トリニダードトバゴ裁判権を拒否)
 ・旧大英帝国離脱(ガンビア、モルジブ、ジンバブエ)
 
このようにアフリカ、ヨーロッパ、中東、アジア、中米などで起こっていることを総括的に描いてくれています。これに加えるなら2016年9月24日、イギリスのEU離脱決定を受けて行われた労働党党首選においてイギリス労働党首にジェレミー・コービンが当選したことです。彼は反戦・反核運動の闘士でもあり、イラク戦争に反対、緊縮財政と公共投資削減に反対、王室廃止を主張しています。
 
これらの世界の動きに反して日本は、トランプがTPPを拒否しても同じ対米盲従路線をとり続けています。アベノミクスは、GPIFやゆうちょマネーを株式に投資し、日銀は異次元金融緩和といって国債の大量買い付けをしてギャンプル経済に邁進していいます。いつ破産するともしれない経済運営や対米盲従路線に対して、日本が捕るべき方向を国民はそろそろ気づいてもいい頃です。